3日目(8/3) フィレンツェ(ルッカへ)

  快晴のフィレンツェ。本日の起床も5:30.思ったよりも夜明けは早い?とりあえず、ドゥオーモ周辺まで散歩にいってみました。早朝のドゥオーモはとても閑散としていて,道の隅に荷車型のスタンドが幌を被って置かれていて、祭りの後の残骸・・・という感じです。昼間の人出の多さと賑やかさとはまた対照的な風景です。でも、この時間の方が、なんというのか静寂さの中にこの辺り一帯がもつ敬謙さが醸し出されていると思うのはのは気のせいでしょうか。ドゥオーモも凛とした気高さを見せ付けてくれます。 さて、ホテルに戻り朝食を摂った私たちは、まずは昨日露天商が並んでいた通りをめざします。この通りもこの時間は昨日の活気が嘘のような静けさです。車道と歩道の境には露天商の車?がこちらも幌を被って列を連ねています。そこを通りぬけながら、中央市場に行きました。どこかの工事現場というのか,学校の仮校舎の体育館?という風情の2階建ての建物で、一見したところでは市場という雰囲気はどこにも見当たりません。東京は築地などの市場を想像しているとものすごいギャップがあります。鮮やかな緑色の階段を上がるとそこが、市場です。1階にはワインショップや肉屋さん、魚屋さんが軒を連ねています。アサリとかすごい量なのですが、めちゃくちゃ安い。思わず買ってしまいました。肉屋さんは丸のまま?の姿でお目見えしている動物さんもいたりして,ちょっとびっくり。X字型になったこちらも緑色の階段を昇ると2階。ここでは野菜や果物を売ってます。お店によって随分と値段と鮮度が違うみたいです。乾燥したボルチーニ茸とかも売ってます。パックに詰められたものではなくて量り売りなので、野菜やフルーツの匂いが漂っています。どの野菜とかもみんな不揃いだけれど,土の匂いと温かさを感じさせるものばかりです。ここでは,マスカットを買いました。1階に戻って,適当にワインを2本購入,さらに水の6本入りパックを買って1度ホテルに戻りました。荷物をホテルに置いて,いよいよ今日の観光の出発です。
 今日の目的地は『城壁の街Luccaルッカ』です。フィレンツェのSMNで切符を買います。列車は2等車オンリーでルッカまでの運賃は片道8300Lit約460円前後です。9:43定刻に出発,途中Prato,Pistoia,Montecatini Termeなどの駅に各駅で停車していきます。列車はディーゼル車なのか発車してすぐにガソリンというのか油くさい臭いが流れてきたのにとてもびっくり。車窓からの風景はなんというのか,日本でもよくある田舎のローカル線の風情?という感じです。駅の近くでは家があり,途中は畠というか農地があり。約1時間20分ほどの間に10の駅に停まるという事からして,この列車は普通の生活圏内を走っているけれど,でもしっかり観光地は押さえているのよねという不思議な路線?のようです。 イタリアの鉄道ではなかなか定刻通りに列車は到着してくれません。今回も10分ほど遅れてLuccaの駅に到着。地下通路をくぐって駅舎側に。駅の正面は広場兼駐車場になっていました。
 その向うには、LuccaをLucca足らしめている城壁があります。堀を渡り,保塁の中に入ると,中は白っぽい石造りのアーチになっています。階段を昇り,城壁の上に出ることにしましょう。 城壁の上には木立があり,感じのよい散歩道になっています。道自体はコンクリートでもアスファルトでもなく陶器を砕いた感じのものが敷き詰められています。私たちが出たのはBALUARDO S.COLOMBANDという保塁の上でした。そこから数段石段を降りるとちょうどドゥオーモの裏手になります。Piazza S. Martinomに出るとちょうど真正面がドゥオーモです。ルッカのドゥオーモの建立は6世紀にさかのぼることができるそうです。その後15世紀まで何度か改修改築がされているとのことです。このドゥオーモの最大の魅力は何といっても,建物の前面の繊細さなのではないかと思いました。ファサードは大理石でできていて,3層の歩廊があり,そこに建つ柱は螺旋を描き細かな細工に覆われているのです。ピサルッカ様式と呼ばれるものらしいのですが,派手さはけっしてないのですがこれを建てた人達の細やかな技術が咲き誇っていました。この建物の右手には鐘楼がありレンガとこちらも大理石で建てられています。ドゥオーモの3つのアーチ付近にもいろいろな彫刻が施され,とても目を奪われます。 ドゥオーモの中には行ってすぐ右手には,ティントレットの“最後の晩餐”がかけられています。コインと投入するとその金額に併せて何分間かライトがあたる仕組みになっていました。ティントレットの最後の晩餐というとヴェネチアにあるのが有名ですが,多作であったティントレットらしくここにもありました。でも,最後の晩餐というとミケランジェロを思い出すnaoeなのです。ここにある作品はなんていうのか人物に生活感というか生生しさがあるような気がしました。こう実在しているというのか,現世にいる感じです。(美術は苦手なので,的を外していたらごめんなさい。)他には「聖なる顔」と呼ばれる木製のキリスト像なども見所です。でも,ティントレットと並んでの見所は,ヤーコボ・デッラ・クエルチャが1406年に製作したイラリア・デル・カレットの墓碑なのでしょう。大理石の寝台というのか棺の上に彼女の彫像が乗っているのですが,その清楚と彫刻の線の美しさは本当に一見の価値がありました。その服のもの襞の柔らかさとしなやかさは本当に見事です。
 ドゥオーモを背にしてVIA DEL DUOMOを進むとPIAZZA NAPOLEONEに出ます。ナポレオン広場です。ルッカはナポレオンの妹エリーザが一時期統治していた都市なのです。この広場の周りにはリストランテやピッツァリアなっどが軒を連ねています。(ここのピッツァリアで昼食をいただきました。)広場を右折して進むとPIZZA S.MICHELEです。ここには,サンミケーレ教会が凛として建っています。 サンミケーレ教会は12世紀から14世紀にかけて建立された教会で、白を基調とした外壁はその高潔さをいやがおうでも高めてみせてくれています。4層にもなるファサードのそれぞれに円柱が建ち並び,それらの一本一本にいたるまで異なった装飾が施されています。その華麗さには思わずため息が漏れるほど・・・・そして圧巻はファサードの頂上部。その両端には楽を奏でる天使,中央には竜を撃つミカエルの像が乗っているのです。ピサルッカ様式の荘厳さをこれでもかと見せ付けてくれる建物です。内部は,外の壮麗さとはうってかわって質素なものでした。 サンミケーレ教会の向かいには蝶々夫人の作曲で有名なプッチーニの生家もありますが今回は見送りに。
 北に向って歩を進め,サンフレディアーノ教会を目指します。途中の道はほとんど石畳でそれらの石は全てローマ時代から綿々とこのルッカの移り変わりを目撃しているようです。、さて,サンフレディアーノ教会は12世紀に再建された教会でルッカロマネスク様式の典型的な建物ということだったのですが,残念なことに外壁はシートで覆われ何やら修復工事中でした。仕方なく見学を諦め,次にローマ円形劇場を目指します。円形劇場といえば昨年ヴェローナでみたものを想像してとても楽しみに探し始めました。 しかし,地図の見方が悪いのか,なかなか石造りの劇場を見つけることができません。サンフレディアーノ教会からはほんの目と鼻の先のはずなのですが。実は見つからないのには訳がありました。私たちは,ヴェローナのような劇場として未だ残っているものを想像して探していたのです。しかし・・・・ここルッカのは,またくといってよいほど元の劇場としての機能は姿を消していたのです。なんとなく石壁の間に開いたアーチをくぐりぬけると,そこが劇場跡でした。何と今その劇場は普通の民家に変貌を遂げていたのです。中央の本来はそこで様々な催しが行なわれた場所にはテントが張られ店が並びんでいます。階段状の観覧席であった場所には家が上積みされ何世紀にも渡って人々が暮らしてきた跡が伺えます。時には洗濯物もあったりして・・・余りにも見事な変貌といえます。ここまで実用化というのか古の歴史あるものが姿を変え,だからといって破壊されるのではなく,現実に即した形に移ろって行くのを観ると,感嘆の声を上げずに入られませんでした。
 さて,城壁の街ルッカの観光もそろそろ終わりです。古代ローマから綿々と続く石畳の道を散策しつつ,お店を見てまわります。観光用のお店もあるし,地元の人が利用するような小さなスーパーも存在しています。ドゥオーモやサンミケーレ教会の周辺こそ,一種独特な雰囲気である荘厳さと威厳と宗教というもののもつ歴史に裏打ちされた気高さ近寄りがたさがありますが,そこを一歩離れると,古くから続いてきたものと現代とは表裏一体となって混ぜんと存在し,お互いを侵すことなく互いを尊重しつつ歩んでいるそんな姿を感じ取ることができる街でした。 再びナポレオン広場に戻ったnaoeは,Via Vittorio Venetoを直進し,駅に向います。今度は保塁ではなく,PORTA S.PIETROサンピエトロ門をくぐって,街の外に出てみました。もう一度城壁の上に上がり,その上を歩きながら町を見渡しますと,この町がこうして過去と現在とを上手く繋ぐにいたった幸運さに驚きます。そしてルッカの町が独特の発展とそして中世戦禍に遭うことなく,生活を営めたのにはざまざまな要因があるのでしょう。でも,そのバランス感覚が今この地を訪れる人々にこの様な感動を与えてくれるのかと思うと感慨もひとしおだったりします。もちろん,こうして城壁に囲まれているが上の様々なマイナス要因というものをたくさんあるのでしょうが。
ルッカから再び電車でフィレンツェに戻って一番感じたことは,ここはやはり今と過去の断崖の存在でした。もちろんフィレンツェには歴史もあり、それはそれで綿々と受け継がれているのです。でも,悲しいかな自分が歩む範囲では,今と過去の一体感が感じられないのです。様々な博物館や美術館,それらには価値ある絵画等が収蔵され,人々の訪れを待っています。でも,それらは箱の中に存在して今を生きる人の中にはない・・・美しき絵画や彫刻そして教会。どれもとても素晴らしいものなのだけれど,そこに息づくものに生活感がないのがなんとなく,寂しいのです。お店もたくさんあるしジプシーもいるし,ここで生活している人はたくさんいるのでしょうが,でもそれはこうやって訪れる観光客を対象にしているのであって,本当にこの地に根を下ろしている人々に出会えない。もしかしたら,出会えるのかもしれないけれど,今の私の行動範囲では感じ取ることができないという感情です。 フィレンツェで過ごすのもあと正味2日。明日は美しき搭の町に出かけます。次ぎはどんな思いを感じることができるのかとても楽しみです。
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